約11ヶ月前に私が講師として参加した行事報告です。
実施日時:2020年2月11日(火 祝)13時から
当日はねいの里で「動物の体を調べジビエ料理を楽しむ」の行事の合間に実施させていただきました。
参加者は樹液採取の実演に約10名。終了後、樹液の味見の屋台を開催したところ約20名の参加があったと思います。
次のシナリオで実施しました。
1)館内で簡単に説明
2)フィールド観察、樹液採取、実演
3)事務所へ戻り暖を取り、樹液の紅茶を飲みながらおさらい
メープルシロップはなぜ採れるか
カナダの国旗で有名なサトウカエデはその名のとおり甘い樹液を採取できます。日本でも寒冷地でイタヤカエデやシラカンバからシロップが採取されています。
カナダの国旗で有名なサトウカエデはその名のとおり甘い樹液を採取できます。日本でも寒冷地でイタヤカエデやシラカンバからシロップが採取されています。樹液は木部の導管を上昇してくる導管液で、この甘い導管液は早春の一時期にしか採取できません。寒冷地の樹木は春から秋にかけて光合成によって、幹や根の柔細胞にでんぷんを蓄積させ秋には最高の量になります。冬になると、柔細胞に貯蔵されたでんぷんが糖に変わり、細胞液胞の水分量も減らして糖濃度を極度に上げて細胞内凍結を防ぎます。 初春、樹木は活動を開始しようとしますが、そのためにはまず細胞内の水分量を高めて細胞内の糖濃度を下げなければなりません。そのとき樹木の根は冬芽がまだ硬いうちから吸水を開始しますが、このときの水分吸収は葉が展開していない状態なので蒸散力による水分上昇ではなく、水は下から押し上げるように根圧で上昇していきます。根圧は浸透圧と考えられています。細根細胞の細胞膜内の高い糖濃度と少ない水分量は高い浸透圧を生み出し、それによって水が上昇する際に、根や幹の柔細胞に含まれていた糖を導管水に溶かしていきます。もし幹の低い位置に、樹皮を貫通して最近2、3年以内に形成された年輪にまで達する穴を開けてチューブを差し込めば、甘い樹液が採取できます。春、細胞内の糖は再び澱粉に変わり、葉が展開した後は蒸散力すなわち大気の吸引力によって水は導管内を上から引っ張られるように上昇していくので、導管内には負圧がかかっており、導管に穴を開けると水は引っ込んでしまう。導管液が甘いのも初春の一時期に限られますので、この樹液が採取できるのは、根圧によって押し上げるように、水が上昇している初春の一時期に限られます。早春、ミズキの低い位置の枝を切断すると水が漏れ出てくるのも同じ理由です。(「絵でわかる樹木の知識」より)
落葉樹が冬を越す知恵
昨年の観察会で説明しましたが、落葉樹は秋に葉っぱを落とし、光合成活動を停止して乾燥する冬を乗り切ります。いわば年金生活をします。しかし、水分を持つ樹木は凍結する危険性があります。防寒服にあたる樹皮では間に合わないみたいです。そこで不凍液にあたいする糖分を柔細胞に蓄えて凍結を防ぐことは誠にすごいことです。冬野菜とよく似ています。
甘さは?
ナチュラルな甘さのメープルシロップは、カエデの樹液を煮詰めて作られます。保存料や添加物などは加えず、100%ナチュラルな天然の甘味料です。透明で水のような「樹液」の糖度は約2です。樹液を加熱して紅茶を飲むとほんのりとした甘さを感じます。
メープルシロップの作り方
集めた樹液を火にかけ、水分をゆっくり飛ばし、琥珀色になるまでじっくりと煮詰めればできあがり。煮詰まる寸前で糖度50くらいになります。40Lの樹液で、1Lのメープルシロップしか作ることができません。約40倍煮詰めることになります。ストーブでゆっくり作るのが理想ですが、ガスやIHでも可能です。最終段階でくれぐれも焦がさないように見張ってくださいね。
カナダでは工業的に実施され商品化されています。木々から配管でつながって、採取されたメープルの樹液は、透明な液体です。森から集めた樹液を シュガーシャック(砂糖小屋)と呼ばれる小屋に集め、 グツグツ煮詰めると、あの琥珀色のシロップになります。 不純物をこして、タンクに入れてゆきます。 本物のメープルシロップは、保存料、添加物は一切入っていません。 メープルシロップは、2週間の間に色が変わり味わいが変化します。透過度によって等級が決められ農家も、作りながら色の変化に気を配ります。
作れるのは春の始まりの数週間のみ
メープルウォーターが採取できるのは、朝晩は寒く少しずつ日中が暖かくなってきた、春の始まりの2週間前後。樹液が取れる地域、1本の木から取れる量、樹齢30年以上など制限があるので、とても貴重な甘味料と言えます。
貴重な日本産も
世界に流通しているメープルシロップは、8割以上がカナダ産と言われています。カナダと言えば、国旗にもカエデの葉が使われていますよね。日本でもわずかな地域で生産が行われており、中には通販で購入できるものも。貴重な日本産を味わってみたい方は、手に入れてみてはいかがでしょう。
手作りはできるの?
本物のメープルシロップを作るなら、自宅の庭でサトウカエデを幹が30cmほどになるまで育て、ドリルで2cmほどの穴を開けてチューブをさし、原料であるメープルウォーターを採取すれば可能です。ただこれには植樹から何十年も時間がかかるので、非現実的ですよね。今すぐ欲しいなら、メープルシロップの代わりとして使える代用の樹木から許可を取って採取しましょう。
メープルシロップの賞味期限
メープルシロップの賞味期限は、封を開けなければ、製造日から、ガラスの容器で3年くらい。プラスチックで2年くらいです。封を開けたら、冷蔵庫で6ヶ月は味が変わらないと、農家から伺いました。賞味期限が切れたからと、使用できないわけではないようです。 味見をしてみてください。メープルシロップは封を開けたら、冷蔵庫に保管ください。
大地の栄養を含んだ雪解け水を吸収した樹液を、煮詰めるメープルシロップには、ショ糖、リンゴ酸、カルシウム、マグネシウム、たんぱく質や糖質の代謝に役立つ亜鉛、余分なナトリウム(塩分)を排出するカリウムなどミネラルがバランスよく豊富に含まれています。砂糖や蜂蜜よりもカロリーが低く砂糖の代用にメープルシロップをご利用いただけます。
メープルシロップで商売できないか?
山村生活で材木以外からの収入源は一般に「特用林産物」と呼ばれ、各地域で様々なものが開発・販売されています。北海道ではシラカンバ樹液から清涼飲料水が、山形県金山町ではカエデ類樹液からシロップやビールが、埼玉県秩父でもカエデ類樹液からサイダーやシロップ等商品化されています。県内ではシロップを乾燥させてドロップにすることを考えている人もおられます。大儲けした話はありませんので無理なのかもしれません。
当日配布した資料です。
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